2.プラスにしてくれるプラバンヘアゴム

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 僕達は藤咲さんに渡された軍手を手にはめ、机の上にセッティングされたオーブントースターの近くに一列に並ぶ。  それぞれオーブンシートという薄っぺらいツルツルの紙と分厚い本を手にし、来るべき時に備える。 「それじゃあ……行くよ。勝負は一瞬だからね……」  藤咲さんの言葉に僕らは緊張感を高めた。  アルミホイルの上に乗せられられた僕の作品が温められていく。 「わっ!ぐにゃぐにゃしてる!」 「わあー……!」 「すげー!」  生き物のように動き回りながら、形がどんどん小さくなる。その光景は見て僕らは声を上げた。ただ藤咲さんだけはオーブントースターの中を真剣な眼差しで眺めている。  やがて動きが落ち着くと藤咲さんの手が素早く動いた。 「行くよ!水上君っ!」 「え?あ、はいっ!」  僕は慌てて二つ折りにしたオーブンシートを開く。  軍手をした藤咲さんがオーブンからアルミホイルごと取り出した。温められたプラバンは僕が準備していたオーブンシートの上にぽてっと落とされる。 「えいっ!」  オーブンシートに折りたたむと、思いきり国語辞書をその上に乗せて体重をかけた。熱でぐにゃぐにゃになったプラバンを真っすぐに固めるための作業だ。 「……どう?」  藤咲さんが僕の顔を覗き込んだ。僕は静かに頷くと、ドキドキしながら辞書をどかす。 「平べったくなった!面白いな~プラバンって!」  僕は出来上がったプラバンをつまみ上げると、目を輝かせた。  さっきまで透明のペラペラの板だったのに今ではしっかりとした硬さのあるパーツに生まれ変わっている。  潰し方やタイミングを間違えるとうまく平らにならないし形も変わってしまう。この作業は瞬発力が重要になってくる作業なのだ。藤咲さんの表情が変わった理由も頷ける。  続いて2人もプラバンを平べったくする作業に移った。 「木村さんっ!はいっ!」 「……それっ!」 「火石君!行くよ!」 「おりゃっ!」  2人ともそれぞれ掛け声が違って面白かった。  ひと段落したところでまた藤咲さんから指示が出る。 「次は一番大切な色塗り作業をやっていこうか」
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