2.プラスにしてくれるプラバンヘアゴム

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2.プラスにしてくれるプラバンヘアゴム

「藤咲さ……」  授業の中休み。藤咲さんに話しかけようとした僕は女子生徒の波に押し戻されてしまう。 「ねえねえ、藤咲さんってどこから来たの?」 「好きなものは?」 「前の学校では何のクラブに入ってた?」  おしゃべりな女の子たちが次々と質問をする。藤咲さんは困ったような笑顔を浮かべていた。  そりゃあ……そうなるよな。転校生が珍しくて、みんな藤咲さんに興味津々だ。  話しかけにくい……。もう少ししたら話しかけに行こう。 「この猫のマスコットかわいいー!」 「どこで買ったの?」  僕はランドセルに提げられたノアのことだとすぐに分かった。見ればノアが女子生徒の手の中にいる。その顔はどこか困惑しているように見えた。 「買ったんじゃないよ。私が作ったの」 「えー!?嘘?作ったの?」 「すごーい!どうやって?」  女の子たちが盛り上がる声が聞こえて少しだけ僕も得意になる。そうだよ。藤咲さんはすごいんだ!魔法みたいにいろんなものを作るんだから。 「私の家、ハンドメイドショップやってるの。良かったら遊びに来てよ」 「本当に?行く行く!」 「私も行きたい!」  すごいなあ……。藤咲さん、もうクラスメイトと仲良くなってる。自分の席に避難してきた僕は遠くから藤咲さんをぼんやりと眺めた。 「転校生、気になるよなー。でも女子があんなに囲ってちゃよく見えねえわ」  急に左隣から声が聞こえて僕は慌てる。 「別に気になってない!というか(たくみ)はどうなんだよ」  火石巧(ひいしたくみ)は僕の親友だ。幼稚園からの仲である。  日焼けし、吊り上がった目は威圧感がすごい。クラスの男子の中でも背が高く体格もいいから学年の男子の中では「火石には敵わない」と恐れられている。 「どうって……。大人しそうなお嬢様って感じだな。あんなんじゃ昼休みのドッジボールも誘えなさそうだわ」 「はあ?誘うなよ!お前とドッジしたら危険だから!」 「なんだよ。クラスに馴染むならみんなで遊ぶのが手っ取り早いだろう?」  僕は単純思考(たんじゅんしこう)の巧にため息を吐く。 「そうかもしれないけどさー。巧がいると危険だから!絶対手加減しないでしょ?」  巧は首を傾げて何が悪いのか分からないという表情を浮かべる。 「藤咲さんを危ないことに巻き込むなよ」 「何だ?その知ったような口ぶりは」 「僕の方が皆より先にあってるんだから!昨日塾の帰り、転んで怪我したところを助けてもらったんだ!」 「え……。優斗、転んだのか?ダサっ」  巧が口元を押さえて馬鹿にしたような笑みを浮かべる。僕は軽く肘で巧を突いてやり返していると……視線を感じて動きを止めた。  僕達に視線を向けていたのはクラスメイトの女の子だった。ロングヘアを背中に流し、丸い眼鏡が良く似合う。僕達の視線に気が付くと、悩みながらも声を掛けてきた。 「あの……。水上君は……藤咲さんとお店のこと知ってるの?」  話しかけてきたのは木村菜実(きむらなみ)さんだ。何気にこうして話すのは初めてかもしれない。 「うん。まあね」  自慢げに(うなず)いてみせる。(となり)で巧が「何、得意になってんだよ」とにらんでくるがお構いなしだ。 「あの……その……教えてくれない?藤咲さんのこと」
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