2.プラスにしてくれるプラバンヘアゴム

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「はあ?何で本人に聞かねえんだよ」  巧の素直な疑問に僕も頷く。 「それは……あの。たくさん人がいるし、それに……」  木村さんは何か言おうとしたけど、それを授業開始のチャイム音が邪魔する。 「じゃあ、お昼休みにね!」  とだけ言い残して席に戻ってしまった。 「悪い、優斗。俺、昼休みはドッジしにいくから」 「あー……うん。分かった」  僕は続きの言葉が気になりながらも、次の授業を教科書を机から取り出した。 「あの……ごめんね!昼休みに……」 「大丈夫だよ。僕もたまには巧の過酷なドッジボールから逃れたかったし……」  久しぶりに昼休み、教室に残る。皆、遊びに行ってしまって教室は閑散としていた。おしゃべりしている女子の()もない。何故なら藤咲さんを連れて学校案内へ行ってしまったからだ。結局僕は一言も藤咲さんと話せていない。  僕は木村さんの前の席の椅子を借りる。 「えっと……あの。私、昨日の学校帰りに……可愛いお店を見つけてね。気になってたの。中はどんな感じなの?」  なんだ。そんなことか……。  僕はどんな話がくるのか構えていたが、肩の力を抜く。 「すごくおしゃれだったよ!ウッド調になっててさ、作業場みたいな場所があってそこで作品も作れるんだ!」  興奮気味に話すと木村さんの目が輝いた。 「本当に?」 「ほら。昨日藤咲さんのお店でこれ作ったんだ」  そう言って僕はロッカーからランドセルを取って来ると、羊毛フェルトで作ったひよこを見せる。 「わあ……すごい。かわいい。水上君、器用なんだね」  緊張で強張っていた木村さんの表情が一気に柔らかくなる。僕は更に調子に乗って続けた。 「藤咲さん、教えるの上手いからさー」 「いいなあ……」  急に木村さんが(さび)しそうな顔になる。 「そんなに藤咲さんのことが気になるなら話しかけてみたらいいじゃん。今なら友達になるチャンスだよ」  木村さんが何か話そうとして、口を閉ざす。少し時間を置いた後で、躊躇いがちに言う。 「こんな私でも藤咲さん、話してくれるかな?」 「え?」  僕は驚いたような声を出す。一体どういうことだろうか…。僕の疑問を持った視線に気が付いた木村さんが答えてくれた。 「あの……その……。私、しゃべるのが苦手で、つまらないから……。藤咲さんに嫌な顔されないかなと思って……」 「藤咲さんは優しいから誰とでも話してくれると思うけど」 「そう……だよね……」  木村さんはうつむくと、慌てて席から立ち上がった。 「ごめんね!それだけ。ありがとう……」  賑やかな声が近づいてきて、藤咲さん達が帰って来たのが分かった。 「……」  早速藤咲さんに話しかけるのかなと思いきや木村さんは視線を逸らしてそのまま入れ違いに教室を出て行ってしまった。 「木村さん……」  僕は寂しそうな木村さんの背を見送ることしかできなかった。
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