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彌生がそう答えると、内村は少し目を開いて彌生を見た。
英加も目を丸くしてこちらを見ていた。
何か変なことでも発言してしまったのだろうか。
彌生はきゅっと口を閉ざして、首をすくめた。
「どうしたん、ぼく変なこと言うてもた?」
「ううん。変なことは言ってないよ。ただ……」
と、言葉を区切って、英加は内村を見やった。
そして彌生に視線を戻すと、口を開いた。
「ヤヨイくんって関西弁喋るんだ、と思って……」
「関西弁?」
「え?」
「え」
彌生と英加はしばらく見つめ合った。
英加が何か言いかけたとき、九条から「前の人について来い。いくぞ」という指示が飛んだ。
彌生と英加の会話は有耶無耶になってしまった。
内村も何か言いたげな顔をしていたが、渋々前を向いて歩き出した。
──入学式は滞りなく終わった。
校長の話がやけに長くて、義兄の説教より聞くのが面倒だったことしか印象に残っていない。
そういえば、関係者保護者の席に義兄を見かけなかった。彌生の入学式だ。
義兄なら絶対に観にくると思っていたのだが、なぜだろう……。
と、思考をめぐらしていると、また右側から視線を感じた。
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