序章 学生生活のはじまり

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 入学式が終わり、教室の席は自由ではなく出席番号順に並び替えられた。  ほとんどの生徒が入学式前の位置とは異なる場所に座った。  そんななか、何の巡り合わせか、座る位置こそ変わったものの、彌生の右隣には依然として茶髪の男子生徒がいた。  ちなみに、彌生の左側には窓があり、生徒はいない。そしてもちろんのこと、彌生の前後には内村と英加が座っている。  これだけ見られておいて、無視はさすがに印象が悪いと思い、彌生は意を決して茶髪の彼に声をかけた。 「なぁ。えっと、はじめまして。ぼくは彌生って言います。そちらさんのお名前を聞いてもええ?」 「……岸江(きしえ)朔弥(さくや)」  とても小さな声で、返答があった。 「岸江朔弥くんね。なんて呼んだらええ?」 「……朔弥(さくや)」 「朔弥くん。よろしくなぁ」 「……あぁ」  会話終了。  彌生は岸江とのコミュニケーションに失敗したようだ。  気まずさに、彌生は、はははと乾いた笑いを残して岸江から視線をそらした。  ガイダンス用紙を熱心に読み込んでいた英加に声をかけて、雑談に興じることにする。 「なぁ、英加」 「なあに、ヤヨイくん」 「部活動何にするか決めた?」  新入生の話題といえば、これしかあるまい。
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