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英加の言う通り、内村は照れ屋なようだ。
よくよく内村を観察すれば、彼の耳は赤く染まって照れていることがわかる。
何だ、態度の悪さは照れ隠しだったのかと彌生は微笑んだ。
こういう会話を繰り広げている真横で、岸江はいまだ視線を彌生に定めてこちらをじっと見ていた。
彌生は前後の二人と会話するために、足を岸江の方に向けて体を開いてしまっている。
左右と会話をしていると、必然的に岸江もチラチラ視界に入り、岸江の視線が感じられてつらい。
岸江が一体何を考えてこちらを見ているのかが本当にわからない。
岸江に意識を向けつつ、英加たちと会話を続ける。
すると、岸江の視線に気がついた内村が、ふと会話を途切れさせた。
「宏輝?」
英加も内村の異変に気がついたようで、不思議そうな声を出した。
内村は岸江をしばらく睨みつけたあと、「なんか用か」と尋ねた。
「ちょっと宏輝、なんでそんな低い声だすんだよ。あー、えっと、宏輝がごめんね。おれは英加七是。この態度悪いやつが内村宏輝ね。よろしく」
「……岸江朔弥。よろしく」
心なしか、彌生と話した時よりも声が出ている気がする。
「うん! ねぇ、サクヤくんは部活決めた?」
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