序章 学生生活のはじまり

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「うん! ねぇ、サクヤくんは部活決めた?」 「……演劇部、が気になってる」 「え!? おれと一緒じゃん! ならさ、おれといっしょに部活動見学、行こうよ!」  岸江と会話を続ける英加を見て、彌生は目を見張った。  彌生は岸江とコミュニケーションを取るのを諦めたというのに、英加は巧みにも彼の話題を引き出している。  正直、すごく感心した。  内村は、岸江が演劇部に興味があるという発言を聞いて、なぜか警戒したように岸江を睨みつけていた。  そうこうしていると、重たそうな教材をたくさん抱えた九条が教室に現れた。教卓の上にそれらを置くと、 「あー、石川から英加まで、おれに付いてこい。教材運ぶの手伝え」  と言ってまた廊下に出るので、彌生たちは一旦会話を止めて、席を立った。  呼ばれたのは、彌生たち三人と、他二名。  名前を尋ねれば、石川と岩見というらしい。  石川は黒縁の眼鏡が硬派な印象を与える男で、岩見は小動物のような、可憐な可愛さをもった男であった。  この五人で、九条の後ろを付いていく。  初対面ということもあり、会話はそれほど続かないだろうと予想していた。が、英加が持ち前の明るさを発揮して、楽しい道中となった。
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