序章 学生生活のはじまり

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 重さに耐える彌生に気づくことなく、英加や内村は資料室から出てしまった。  残るは、別の教材を抱えた九条のみ。  九条は、彌生の産まれたての子鹿のような震えを見ると、ため息をついて、彌生から半分ほど教材を取り上げた。  いくぞ、と言って九条は歩き出した。彌生は多少軽くなった教材を、それでも必死の思いで教室に運んだ。  重すぎて、腕が壊れる。  と思ったが、壊れるギリギリで運び終えることができた。  内村はかろうじて帰ってきた彌生に「お前体力ないんだな」と非情なことを言い放ち、英加は「腕、大丈夫?」と彌生の心配をしてくれた。  曖昧に笑って彌生は席についた。  腕を見れば、教材の重みにやられて真っ赤っかだった。  これは……と自分の弱さに少し悲しみを感じた。  教材を配ったあとは、クラス全員の自己紹介が始まり、全員が名前と好きなものを話すこととなった。  それは筒がなく終了し、クラスの役割決めに移行する。  まずはクラス委員長を決めるということで、九条は 「クラスの委員長をやりたい奴は挙手しろ」  といった。
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