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彌生は落ち込みながら、自分の現状を男に伝えた。
男は低い声で聞き返した。
しかし、男には何か思うところがあったのか、「名前は」と尋ねてきた。彌生が名乗ると、男は片眉を上げて、納得したように頷いた。
「あー。お前、帰国子女のやつか。ならお前は俺のクラスだ。付いてこい」
男は一方的に会話を切り上げると、彌生を見ることもなく歩き始めた。
彌生はようやく自分のクラスが判明したことが嬉しくて、男の後ろに嬉々として付いて行った。
彌生たちが向かうクラスは、先の黒板からは近くになく、廊下の一番奥にあった。
その道中はちょっと長かったが、男と彌生の間で会話はなかった。
彌生はそもそも男に話しかけようと思っていなかったが、男も特に彌生と話そうとする気配はなかった。
一度、男が彌生の様子を忍んで確認したのは知っている。しかし、話しかけようとしている動作ではなかったので、彌生は無視していた。
「おら、入れよ。」
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