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九条がいなくなるやいなや、途端に騒がしくなる教室。
それを見て、彌生は愉快な気持ちがわいた。
あちらこちらで、自由に豊かな会話が始まっている。
名乗り合うものから、砕けた会話まで。
教室を見回すと、正門で見かけた二人組の男子生徒がいるのが見えた。
同じクラスだ、嬉しい。
彼らはやはり、楽しげに二人で会話していた。
彌生が教室の雰囲気を堪能していると、右側から視線を感じた。
振り向くと、先ほどの茶髪の男子生徒がこちらをみていた。
茶髪の男子生徒は何を言うでもなく、彌生を見る。
彌生には彼の真意が図りかねて、声をかけてみようかと口を開いた瞬間、校内放送の間抜けな音楽が響いた。
途端に鎮まる教室。
その現象に、不思議さを覚えて彌生はにやりと笑った。
茶髪の男子生徒は、そんな彌生を見ていた。
放送は、一組から順に並んで移動しろと言うものであった。
どこからともなく九条が現れ、彌生たちは、出席番号順に並び替わり、廊下に並ぶよう指示された。
その際彌生の前後に立ったのが、正門で見た二人組であった。
彌生は少し嬉しくなって、顔を綻ばせた。
「ねぇねぇ、名前なんていうの?」
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