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魔王様、世界征服失敗の危機です!
その日。
私はいつもの通り、西方戦線に出陣し、戦果を挙げて帰ってきた。
我が魔王軍の進軍は実に順調である。この分ならば、西の町々を制圧するのも時間の問題だろう。
「ただいま、皆の者、帰ったぞ!」
今日も今日とて、ご機嫌に魔王城に帰還。
ところが、城の者達の様子がどうにもおかしい。私が挨拶すると、エントランスの階段を駆け下りてきた部下が真っ青な顔で告げた。
「ま、魔王様大変です、お妃様が!」
「何?どうした」
「ま、魔王様の秘密が、お妃様に……」
その言葉で、私は全てを察してしまった。そんなバカな、とその場に凍り付く。
“彼女”に会いに行く時は絶対にバレないように変装していた。特に妻には気づかれないよう、魔法で結界を作り、アリバイ工作までしていたはずなのだ。
それなのに、何故気づかれた?
絶対に、絶対に――この逢瀬だけはバレてはいけなかったのに!
「お帰りなさい、あなた」
「ひっ」
階段を、ゆったりとした足取りで降りてくる、赤いドレスの美女。
魔王の后・カロリーヌは、こめかみに青筋を立てながら告げる。
「あなた……わたくしを裏切っていたのね」
「ま、待ってくれカロリーヌ!私は……っ」
「裏切っていたんでしょう?約束したはずよね、結婚する時に。それなのに、どうして?……絶対に許さないわ」
絶対零度の殺気。私はその場で尻餅をついて、絶叫したのだった。
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