友達を選ぶのはわたし

1/1
前へ
/3ページ
次へ

友達を選ぶのはわたし

 そしてその年の暮れ、ヒロミの葬儀の案内状が届いた。  夫からの精神的虐待を苦にした自殺。葬儀に出席した彼女の友人は私しかいなかった。  もしもヒロミが、あと一回人生をやり直せても、同じ結末になっていたような気がする。  同じく私も⋯⋯。  あと一回友達を選び直せても、この過程は必ずどこかにあったと思う。  人の縁が前世からの因縁によるものなら、「友達は選びなさい」なんて無理な話で、出会うべくして出会ったのだと言えるだろう。  たらればを繰り返して、未練と後悔を引きずってきた私がそう思うようになったのは、ヒロミの遺物であるフクと家族になってからだ。  フクはいつも奇抜で斬新で既視感がない。  この子には前世からの因縁を感じない。  だからこうも思う。  あと一回ヒロミと出会ったら、私はちゃんと友達になるだろう。  そしてヒロミは自殺し、フクを私に遺すだろう。  パパもママも否定すると思うが、私は出会うべくして出会う友達を選んでいた。  あと一回、別の人生を選んでいたらフクには出会えなかった。  それを一期一会というんじゃないかと思う日々が、未練と後悔によるあと一回を私から消し去った。  独身貯金ゼロ恋人なしの現状は、ここからここからの気持ちで変えていけば良い。  何かを始めるのに遅いことはないし、マイナスからでも人は立て直せる。  スタートラインに立ったと思って、何かを成し遂げた人生にしてやるのさ。  招き猫が味方だもの。  開運招福は約束されている。  そう、あと一回なんて言い訳はやめて、ここからここから、頑張ってゆくのだ。   (号砲)
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加