恋の芽生え

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恋の芽生え

秋が深まるにつれて、私と兼の関係はさらに深まっていった。私達は自然と手を繋ぐようになって、お互いへの気持ちを隠せなくなっていった。 そんなある日、夕暮れの街を歩いていると、思いもしなかった出来事が起きた。 「美波、僕、君のことが好きだ。」 兼が突然告白した。彼の気持ちは知っていたけど、改めてその気持ちを聞くと自分も彼への気持ちを伝えたいと思い始めた。 「私も、兼のことが好き。」 私のこの返事に、兼の顔がパアッと輝いた。 「本当に!?」 「本当だよ!ていうか、普通に手を繋いでる時点で気が付かない?」 「確かに、美波の言う通りだね。じゃあ、付き合ってもらえる...?」 「もちろん!」 私達はその瞬間から、ただの友達ではなく、恋人同士になった。 だけど、私達二人の幸せはそんなに長くは続かなかった。私と兼の両親は、昔からの因縁でお互いを嫌っていた。 だからなのか、私達二人が恋人同士であることが知られると、両親は猛反対した。 私と兼が小さな公園でお散歩していた時。兼のお母さんが突如現れた。一体何事だろうと兼と話していた時、彼のお母さんが彼の腕を引っ張った。 「兼!なんで貴方はあの憎たらしい一家の娘を恋人として仲良くしてるのよ!ほら、帰るわよ!」 「ちょっと、離せよ!」 「うるさいわね!駄々こねないで言う事聞きなさい!」 兼の母親の声が激しく響き渡った。私達の空間に緊張が走り、兼は黙ってその場に立ち尽くした。 彼の心の中では、私への強い思いが渦巻いていたが、彼のお母さんの怒りがそれを抑え込もうとする。 「母さん、僕は美波を愛しているんだ。彼女がどこの家の娘だとか、そんなことは関係ない!」 兼は強い口調で言い返した。しかし、彼のお母さんはその言葉を聞くと、さらに表情を険しくした。私はそれに嫌な予感がした。 「関係ないですって?あの家は私達に不運をもたらすのよ!」 彼のお母さんは因縁を思い出し、怒りと悲しみが混じり合った目で兼を見つめた。 「わかってるよ。でもそれは、僕たちの問題じゃない。そんなに不運が嫌だったら俺達が変えればいいじゃないか。とにかく、僕たちの未来は、僕たち自身で決めるべきだよ。」 兼の言葉に、彼のお母さんは一瞬言葉を失った。兼が勝った!と思った。しかし、その後すぐに決意したように彼のお母さんは声を強めた。 「兼、それでも私は認めません。あの美波って子とは別れるのよ。これは家族のために、あなたがすべきことなの!」 「どうして?僕が幸せになることが、家族にとっての幸せじゃないのか?」 兼の声は切実だった。 彼は私と過ごした日々を思い出し、その笑顔が目に浮かんだ。だが、母親の厳しい視線はその希望を押しつぶすかのようだった。 「私たちは家族だからこそ、守るべきものがあるの。あなたの幸せが、その上に成り立たなければならないのよ。わかってくれないかしら?」 彼のお母さんはそう言い残し、静かに背を向けた。兼はその場に立ち尽くしていた。彼が握りしめた拳が震えていた。 彼の心の中には、どうすることもできない無力感が広がっているように見えた。それでも、彼は決して諦めるつもりはなかった。 「美波、俺はどんな障害が立ちはだかろうとも、戦うことにする。覚悟を決めたんだ。」 「うん」 「だから、何があっても俺は美波を落とすことなんてないからな」 「私も、本当。兼愛してるよ」 「愛してる」
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