*強襲*

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*強襲*

   * * *  薄い膜が雲一つない青空を覆い隠す。フウは高層ビルの屋上にいたはずなのに、地上に足をつけていた。少し離れた場所には巫女装束を纏う女が立っている。女は白い小袖に緋袴を履き、後ろで束ねられた長い黒髪は風で優雅に揺れていた。凛とした佇まいと意志の強そうな眼差しにフウは気圧される。  張られた薄い膜は女が生み出した結界であろう。薄いながら魔力の密度は高く、容易に破れるような代物ではない。寧ろ頑丈さを兼ね備えた上で薄さを追求できている分、かなりの実力者と見受けられる。基本的には結界は厚みが厚いほどに強度が高いとされているのだ。  結界の内側となる異空間は屋上が地上に変わったことを除けば風景は概ね現実世界に近しいもので、屋上から上の部分だけを切り取った感じであった。色が白黒なせいで些か物寂しさを覚える。 「睡蓮の感知力はさすがね。神だからこそ悪魔を感知しやすいのかもしれないけど、まさか人の形をしてるなんて想定外だったわ」  目尻を上げて睨みつけてくる女をフウは知っていた。牢にいた頃、時折訪ねてきた百山という女だ。悪魔に対する嫌悪感が強く、退魔術師としての正義感に満ち溢れた者。フウの元へは監視のために来ており、露骨に嫌そうな顔をしていたのが印象に強く残っていた。
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