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「お前の望みは何だ」
唐突な洵麗の態度の変化に、少年は見るからに戸惑っていた。当然であろう、少年には洵麗の心境の変化など読むことはできないのだから。
洵麗は少年の清らかな魔力に当てられて、心を奪われたのだ。守らねばならない、この悪魔らしくない少年を。そう使命感に駆り立てられるのは、悪魔の策略か、己の本心か。分からずとも洵麗は構わなかった。
消えかけたこの命を救ったのは少年なのだから、ただその恩に報いたいだけ。
「うーん、君って僕に殺されるかも、とか考えないんだ。嗚呼、別に僕も食べたいわけじゃないからね」
少年は一呼吸置いてから再び口を開く。
「僕はフウ。君の命を僕が繋いであげるから、代わりに僕を守ってよ……君の命が尽きるまで」
「それがお前の望みであるなら、この命尽きるまでお前に捧げよう」
消える寸前だった洵麗は一人の悪魔に救われた。神と悪魔、本来ならば相容れないはずの二人が歩む道は、今はまだ誰も知らない。
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