*退魔術師*

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*退魔術師*

   * * *  退魔術会の地下牢の前で二人の男が、錠の外れた牢屋を見ていた。牢の中に残された鎖と枷には傷一つなく、枷を鍵で外したということが窺える。 「クソッ、あの餓鬼どうやって逃げやがった」  金髪のオールバックの男が悪態をつきながら格子を蹴る。 「智尋(ちひろ)、そう苛立つな」 「あ? てめぇが逃がしたんじゃねぇよなあ、玖藍(くらん)」  玖藍と呼ばれた男は腕を組み、智尋に向かって笑みを浮かべていた。その様を見た智尋は青筋を立てて、先程よりも強い力で格子を蹴る。玖藍という男は常に笑顔を張り付けており、そこから真意を垣間見ることは叶わない。 「オレの魔力の痕跡でもあった?」 「ねぇよ。てめぇが手引きしたなら痕跡残すなんてヘマしねぇだろうしな」 「ふふ、高く買ってくれて嬉しいよ」  一ミリも表情も変えず、感知できる魔力も僅かな乱れすら起こさないのが玖藍という奴だ。長い付き合いにはなるが、玖藍が語らない限り、彼から情報を得ることは一切できず、魂胆を暴くことができないという事実がより一層智尋を苛立たせた。
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