*退魔術師*

2/4
前へ
/84ページ
次へ
 だが、智尋が玖藍を疑うのにも理由がある。単に腹立たしく憎らしい相手だから出鱈目を言っているのではなく、玖藍は退魔術会の中で共存派と呼ばれる派閥のリーダーであるのだ。  共存派とは文字通り、人間と悪魔も共存が可能だと唱える一派。無論人間に害を与える悪魔は裁くべきという点では智尋と変わらないが、害を与えず人間に好意的な悪魔とは共存ができると玖藍たち共存派は言うのだ。  仮にも退魔術を扱う者が魔と共存できるなどと甘い考えを抱くことが智尋には理解しがたい。しかし、玖藍が共存派である以上、この地下牢に囚われていた悪魔を逃がしたと疑うのは決して可笑しなことではないだろう。何故なら此処にいた悪魔は人間に直接危害を加えたことなど一度もないのだから。 「ちっ、ここで口論したって何も始まらねぇから、さっさと行くぞ」
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加