*強襲*

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「へえ、なんか意外。お前が僕を速攻で襲ってこないなんて」  あれほど嫌われているなら、いきなり襲い掛かってくると思っていたが、予想に反して彼女は結界を張っただけで戦う素振りを見せて来ない。 「私だって襲う気だったわよ。けど、あんたから負の魔力を感じないのよ。おかしいじゃない、悪魔のくせに」  負の魔力を持たない悪魔は退魔術師としては想定外。それでも悪魔である以上、退治しに来るものと考えていたが、案外百山は割り切れないタイプのようだ。  フウにとっては有難い状況ではあるものの油断はできない。彼女の気が変われば、フウには今の状況から打破する術はないのだから。実質生殺与奪の権利を握られていると言っても過言ではない。  緊迫した空気が流れる中、互いの呼吸音だけがはっきりと聞こえる。フウは百山をじっと観察して、動作の一挙一動を見守った。戦えないのなら攻撃を避けて悪足掻きをするしかない。運が良ければ攻撃を利用して結界に穴を開けられる。  空気が揺らいだ瞬間、コンクリートの地面から蔦が現れてフウに巻き付こうと狙ってきた。髪の毛を掠めながらも間一髪避けられたが尻餅をついてしまう。  蔦が方向転換して再びフウの元へ向かってきた時、突如禍々しい空気が充満し始めた。
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