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「何これ」
息を吸うのすら困難なほど淀んだ空気に、百山は袖口で口を覆い隠した。集中力を切らしたことで魔力の蔦は既に消えている。ピキッと音を立てて結界に罅が入った。
「結界の強度を上げて!」
フウは焦りの声を上げる。彼には結界を破ろうとしているものの正体が分かってしまったのだ。
今この結界の外にいるのは、フウの強大すぎる魔力に引き寄せられた無数の悪魔。どれほどの数かは分からないが、少なくとも百山一人で退治できる数を優に超えていることだけは間違いない。
「分かってる、分かってるわよ。けど」
悪魔の言いなりになるのは癪ではあるが、流石の百山とて今結界を破られたら不味いということくらいは理解できる。
強度を上げようと結界に意識を回していても、負の魔力に侵されている状態では緻密に魔力を練れない。何よりも外から押し入って来る魔力が大きすぎて、単純に力の差で押し負けているのだ。
ピキッ、ピキッと罅は徐々に広がり、そこから重々しい魔力が漏れ出してくる。
百山の意識が一瞬だけ飛んでコンクリートに倒れ込んだ。それでも気丈に結界の罅を修復しにかかる。
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