*強襲*

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「もう良いよ。結界を解いて君だけ逃げて」  フウは彼女の横に座り込み、諭した。  結界が壊れるまでに、悪魔を感知した彼女の仲間たちが此処に辿り着ければ、と思ったものの、助けは間に合いそうにない。この様子では結界が破壊されるのは時間の問題だ。救援が無理なら彼女に自力で逃げてもらうしかない。 「ふざけないで。私を誰だと思ってるの。退魔術師が悪魔を見逃すわけにはいかないじゃない」  眼前にいる悪魔も、結界の外にいる悪魔も見逃すなど、百山のプライドが許せない。震える身体を気力だけで起こして、一気に魔力を結界に流し込む。一メートルほどに広がっていた罅が少しずつ塞がっていく。 「お前も、外にいる奴らも私が退治してやるわ」  そんなことは到底できやしないというのは百山自身分かり切っている。そもそも退治する気なら結界を解かないと意味がない。それでも言葉だけでも強気でいないと心が折れてしまいそうなのだ。流石に悪魔を感知した退魔術師が応援に来るだろう。それまで時間を稼げれば百山の勝ちだ。 「そう、僕には何もできないから、君がそれで良いなら良いよ」  フウは肩を竦めながら立ち上がった。外には変わらず悪魔の気配が蠢いている。魔力を自分で使えないというのは本当に無力だなと嘆いた。
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