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ケンちゃんを洗い終えて、湯船の水をすくって流してあげる。あらら、ケンちゃんの顔の皮がベロンと取れちゃった。湯船の外に捨てた。湯船の水は、ケンちゃんの垢で茶色く濁って、ところどころシャンプーの泡が浮かんでいる。その水の中で、足を体育座りして、肩まで浸かった。
「こうやって一緒にお風呂に入ってると、恋人みたいだね」
ケンちゃんは薄目を開けて、うつらうつらとしている。そういえば。
「スーパーで頭のおかしい女にあったよ。小汚い赤い髪でさ。ケンちゃんのこと、慶人って呼んでた」
「おま……早くそれを……! それで、どうした!?」
ケンちゃんは思いっきり片目を見開いて、まとまってない言葉を矢継ぎ早に吐き出した。その様子がおかしくて、おかしくて。ニヤリと、口の端まで吊り上げて笑った。
「殺したよ」
鉄をつんざくような音だった。うるさいなと耳をふさいで顔をしかめた。こんなに大声出したら、人間だったものが集まってきちゃう。それにしても。
「どうして、泣いてるの?」
イライラする。ほんと、イライラするなぁ。あんなにお金使ってあげたのに。ケンちゃんはドロドロと、目玉と黒いアイホールから白い汚い液体を出して、かつて綺麗だった顔をぐちゃぐちゃにしながら何かをわめき散らしている。まぁいいや。とりあえず沈めておこう。
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