ケンちゃん

「あー、まだ完全にゾンビ化してなくてよかったわー」
　目の前に豚の擬人化みたいな小汚くて臭いおっさんが飛び込んできた。誰だよお前は。ていうか、体が動かない。

　おっさんはバールのようなものを雑に床に投げ捨てると、私を仰向けにした。ノコギリを取り出して、私の首に押し当てた。

　冷たい感触。何を！？　それが熱さにかわる。ギコギコギコという音と、男の荒い呼吸。それがやがて痛みに変わって、だんだん激しく……。

　やめて！　痛い！　やめてくれ！　痛い！　痛い！　やめろ……！　痛い！　痛い！　やめろ痛い痛い痛いやめろやめろ痛い痛いやめろやめろ痛いやめろやめろやめろ痛い痛い痛い痛いやめろ痛いやめろやめろ痛い痛い痛い痛い痛いやめろやめろやめろ！！！ああああああ！！！！！！痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い！！！！！！

　ギコ……ギコギコ。ギコギコ。

　あれ？　そういえば、何も痛くない。ああ……そっか。もう、何も見えない、感じない。薄れゆく意識の中で私が最後に聞いた言葉は。

「エミちゃん、ねぇ、エミちゃん。大好き。愛してる」