ケンちゃん

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「それじゃあ、いただきます」  両手を合わせて、箸を握る。テーブルにはお皿に乗った目玉焼きと二つのマグカップ、それとケンちゃん。目玉焼きの黄身を箸で崩し、黄身を絡めて固まった白身を食べる。ちなみにソース派。 「おい、俺の飯」 「そうだった、ごめんねケンちゃん」  実は視線に気づいてたけど、身動き取れないケンちゃんを見ながら食事するのが楽しくてさ。綺麗な方の目玉焼きの端を箸でちぎり取って、 「はいあーん」  ケンちゃんは、すごく不満そうな顔をする。いつも。でも、すぐに空腹に負けてあーんって口を開けるんだ。 「たまにはバター醤油で食べたいな」  もぐもぐしながらそんなことを言う。  今までだったら、ソースのかかった目玉焼きを朝ご飯に出そうものなら『目玉焼きにはバター醤油だろうが!』って殴られていた。  拳ならまだいい。椅子で殴られて頭を何針も縫うこともあった。ステーキを間違えて焦がしちゃって、フライパンで殴られた火傷痕は、まだ右手首にある。
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