ケンちゃん

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 ホウキとちりとりで部屋の掃除をして、ゴミを廊下の窓から出した。軽くストレッチして、夕飯を取りに行こう。靴ひもをぎゅっと固く結ぶ。これ、ほんとに、大事。 「ケンちゃん、外行ってくるからね」 「タバコ取って来てくれ!」 「もー! 体に悪いから禁煙しなよ!」  そんなゆるい会話をして、窓から飛び降りた。玄関はやつらが入って来れないようにバリケードを張っているから、二階の物置の窓から移動することにしているのだ。  地面の上に着地すると、音を立てないようにあたりを警戒する。大丈夫、誰もいない。拳銃を構えて、引き金には指をかけずに角から様子を見る。  やつらは頭を打ち抜けば死ぬことは知っている。スーパーマーケットへと続く道には、頭に小さく穴をあけた人間だったものが沢山転がっていた。  銃って意外と命中するもんなんだなって思った。こんな状況になるまで、銃は撃ったことがなかったが、私には意外と才能があったらしい。  さてと。小さく首を振って左右に視線を向ける。後ろへの警戒も怠らずに。怖いのは、動く死体と化した人間だけじゃない。生きている人間も、だ。食糧や燃料が限られているのだから。この国の文明は、死んだ。
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