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「そうだ、ご飯の前にお風呂に入れなきゃね!」
風呂場は薄暗くてカビが生えている。服を脱いで、ケンちゃんを抱っこして湯船に入る。蛇口をひねると少しづつ生ぬるい水が溜まっていく。
電気とガスはもう使えない。雨水をタンクに貯めているので、風呂場の蛇口だけはなぜかまだ使える。私としては助かったが。
ジャージャーと流れる水を見ながら、ケンちゃんは
「風呂ためてから入ればいいのに……」
なんて口を尖らせたが、
「私にそんな計画性があったら、ケンちゃんと出会ってないよ」
「そっちのほうがよかったけどな」
まだついている方の目を閉じたケンちゃんが可愛くて、くすっと笑って、シャンプーを手に出してケンちゃんの頭をゴシゴシ洗った。
「あ、痛っ」
シャンプーの泡が傷に染みて、思わず膝の上に乗せていたケンちゃんを落としそうになった。あわてて両手と膝でキャッチして、水の中に落とさないですんだ。
「何すんだよ馬鹿!」
「ごめんごめん」
目にシャンプーの泡が入って涙目のケンちゃんの怒鳴り声を聞きながら、そういえば、いつの間にこんな傷ができたんだろう。そう思いながら、親指の付け根を眺めた。傷にシャンプーの泡が付かないように気を配りながら、そのままケンちゃんの顔もゴシゴシ洗った。
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