ー優大ー想定外

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とりあえず、今日撮れるシーンは何とか終わった。 大人の三角関係ってドロドロしてるよね。 ドラマの場面で奪い合いしてると、何だかあっくんとか晴を思い出す。 ある意味僕らもそういう関係だったかもしれない。まあ略奪なんてしないほうがいい。 奪えたとしても、関係が上手くいくとは限らないし。 真希ちゃんにメッセージを送ろうとすると、彩香ちゃんが話しかけてきた。 「お疲れ様でーす。今日はいっぱいNG出しちゃってごめんなさい」 「お疲れ様、彩香ちゃんって素人なの? 」 「え!? あたし、こう見えても演技派女優で通ってるんですけど! 」 「へぇ。ミスとか多いし、やる気ないのかと思ってた」 嫌味を込めて言った。ちゃんとやらないのが悪い。 違いますよ、と彼女が近づきその後耳元で言った言葉。 「優大さんがあたしを好きになってくれたら、わざとNG出すの止めてあげますよ」 は? 馬鹿なの? わざとだったんだ。 何が演技派女優だよ。笑わせないで。 ちゃんと演じてもらわないと困るし、私情をはさむなよ。 「恋人居るから、彩香ちゃんは好きになれないって前にも言わなかったっけ」 「え。諦めませんよ。優大さんはあたしのものになるんです」 さっきから何言ってんの。意味が分からないな。 諦めてもらいたいから言ってるのに理解してない。 「あたし先帰りますね。失礼します」 帰ってくれて助かった。 付き合いきれない。 メッセージアプリに、心配だから送った。 『真希ちゃん ちゃんと食べてる? 』 しばらく待ってみたが返事が来ないから、帰ることにした。 帰り道、止めてくださいって女性の声が聞こえた。 近くを通ると、彩香ちゃんが男性に絡まれていた。 「そういうの困ります」 「いいじゃん。可愛いんだからさ。ちょっとヤらせてよ」 心配だ、止めに入ろう。 女の子なのに何かあったら大変だ。 「すみません。僕の連れに何か」 「お兄さん、彼氏? 」 「そうですけど。しつこくするなら警察呼びますよ」 そうだと言ったのはその場を切り抜けるための嘘。 男はびびったのか、立ち去って行った。 「大丈夫? 彩香ちゃん」 「あたし、怖かったあ」 余程怖かったからか彩香ちゃんが抱きついてきた。 慌てて突き放すと泣き出してしまった。 しょうがないのでなだめる。 たまたま彩香ちゃんが絡まれた所を助けただけ。 周りに僕以外の人が居なかったのもあるし。 だから、これ以上頼らないでほしい。 少し落ち着いた彼女に聞いた。 「なんであんな男に絡まれたの? 」 「分かんないですぅ」 「分かんないですって、何か原因でもあるんじゃないの? もしかしてストーカーとか?」 「たまたま声かけられたんです。道を聞かれたので、答えたらあんな風になってしまって」 偶然声をかけられたとしても女の子なんだから、もうちょっと危機感を持ってほしいな。でも、道を聞かれたら親切にするしかないよな。とはいえ、なにかされそうな時は逃げたりしないと。 「とにかく、気をつけなよ。じゃあ、僕はこれで」 「嫌! またあんな目に合いたくない、怖い」 引き留められたので、仕方なく彼女を家の近くまで送ることにした。
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