ー優大ー堕ちる

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真希ちゃんが男に抱かれていた。 僕以外の誰かを受け入れるだなんて。気持ち悪い。 その場で吐きそうになった。 でも、それ以上に怒りと悲しみの感情が襲ってきて、頭がおかしくなってしまいそう。 他の男とそういうことしてるんだ。 嫌だ、嫌悪感しかない。 「なんで……? 」 思わず言葉にしてしまった。 扉を開けて真希ちゃんを見た。 酷く驚いてる。そんな顔するなよ。 「っ……ざけんなよ!! なんで他の男に抱かれてる訳!? 」 しかも相手は忍。意味が分からない。 「違うの。優大君、助け……」 「酷いよ。僕は真希ちゃんがそんな軽い子だと思わなかった」 「好きで抱かれてる訳じゃないの、お願いだから……」 覆いかぶさってた忍が起き上がり笑いながら言った。 「真希さんそりゃないですよ」 そうだよ、なんで断らないんだよ。そんな言い訳が通用するとでもいうのか。 「真希ちゃんは好きじゃなくてもヤレるんだ? 最低」 そう言うしかなかった。最低という言葉しか思いつかない。 「そんなこと言ったら、優大君だって私以外の女性と親密な関係になってるじゃないの」 そんな泣きながら言わないでほしい。 悲しいのは僕の方なのに。 「そんな顔されても、真希ちゃんのしたことは酷いことなんだよ。ちゃんと話がしたくて来たのに」 話なんてしたところで、きっと無駄。 彼女は他の男を選んだ。その事実は僕を酷く傷つけたんだ。 悲しすぎるくらい呆気ない。 真希ちゃんと一緒に居た心地良さや愛しさを残したまま、あまりに強い嫌悪感で心が塗りつぶされた。 簡単に諦めるのは、これ以上期待したくないから。 仲直りなんてしなくていい。 「別れよう。これ以上は何も話したくない。さよなら」 真希ちゃんが何か言ってるようだったけど、聞きたくなくてその場を立ち去った。 彼女は僕を心から好きではなかったんだろうか。 そんな風に思ってしまう。 いっそ知らん振りをして帰った方が良かったのかな。 でも、声を上げずにはいられなかったんだ。 そもそも僕が彩香ちゃんとスキャンダルにならなければ、まだ関係は続いていたはず。 結局は全部、僕のせいか。 愛想をつかされて忍の誘いにでも乗ったのか、それとも真希ちゃんから? 考えてもどうしようもないのにね。 僕は人に対して冷たくて、すぐに諦める。 芸能人。普通じゃなくなっただけで、沢山のものが犠牲になった。 その中には大切にしていた人間関係だってあった。 裏切られるなんて慣れてる。 それなのに、何で? 真希ちゃんだけは変わらないままだって信じてた。 あの笑顔に嘘はないって。 こんな終わり方、悲しすぎるよ。 失っていいものなんて1つもない。 それなのに沢山無くなっていく。 真希ちゃん。君だけは大切でありたかった。 最後まで、残るものって一体何? 真希ちゃんなら、演じなくてもありのままで居させてくれる様な気がした。 諦めなければ彼女はずっと大切な存在であったのか。 簡単に諦めてしまう僕は、なんて弱いんだろう。 ここでもし、後悔しない選択肢が選べるなら。 今、彼女の所に戻るべきか。 無理だ。僕には出来ない。 真希ちゃんの顔をまともに見られる自信がない。 それにもう好きじゃないと言われるかもしれないし。 自分の弱さを恨んで泣きながら帰った。
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