ー真希ー知りたかった謎

1/1
前へ
/80ページ
次へ

ー真希ー知りたかった謎

忍さんは私の家にまで来て、無理やり抱いてくるのに。 全く来なくなった。その方が助かるんだけど、また来るかもしれないと思うと不安になる。 仕事が忙しくなりだしたのかな。 好きでもない人にされるなんて、嫌。 優大君に見られて完全に嫌われてしまった。 あの時、助けてくれるんじゃないかって一瞬だけ期待した。 でも冷たくされた。ある意味良かったかもしれない。 優大君の冷たさはハル君との一件から違和感があった。 本当は優しい人じゃないのかもって。 私は一体、優大君の何を見ていて、何を知っていたんだろう。 きっと本当のことなんて何一つ知らない。 向けられていた笑顔も、告白の時の真剣な表情だって表の顔だったのかもしれないよね。 そんなことを考えてるとインターホンが鳴った。 また忍さんかもしれない。 前も来た時、拒んだらばらすと言われて仕方なく家に入れてしまった。 怖くて呼吸が苦しくなる。 誰かと思ったら、ハル君だった。 何で私の家に? もしかして、ストーカーしてたのばらされた? 今はもうしてないけど、迷惑だったのかもしれない。 玄関を開けると、泣きそうな顔をしていた。 「ごめんな。忍から聞いたんだ」 やっぱり忍さん、ハル君に言ったんだ。 「……無理やり抱かれたって。辛かったよな。ごめんな。俺のせいだ」 え、ストーカーの話じゃないの? 謝らないでほしい。悪いのは私なんだから。 「ハル君のせいじゃないよ。確かに痛かったし、物凄く嫌だったけど、私が悪い」 「真希のせいじゃないから。忍はぶっ飛ばしといたから。もう2度と来ない。安心して」 もう、来ない。それは果てのない苦しみから解放されるってことだよね。 良かったと言ってもいいのだろうか。 ハル君が助けてくれた。 でも、私はストーカーしてたんだよ。 もしかして、気づいてないのかな。 謝らなきゃ。 「ねえ、ハルくん。嫌がらせしてたの、私。迷惑かけて本当にごめんなさい」 「知ってた。でもストーカーされたって嫌いにならないし、そこまでさせてしまって……ごめん」 「違う、違うの! 私が悪いんだから」 「俺は真希のしたこと全部許せるよ。だって愛してるから。何かもかも受け止められる」 そんな簡単に許せるなんて。ハル君はおかしい。 どうして、許すの。 自分のした行いが、どれだけ最低なのかおもい知った。なのにハル君は、許してくれる。 これほどまで大切に思ってくれるのは、きっと彼だけ。 なんで、こんなに私は好かれてるんだろう。 目にうつるのは、藍来にも見えるハル君。 前よりも似てきてるような。 いや、藍来? そう見えてならない。 気になるからとりあえず、上がってもらおう。 「とりあえず、上がっていかない? 」 「うん。そうするよ。ありがとう」 怖い、何でハル君のはずなのに藍来に見えるんだろう。もはや、似てるとかのレベルじゃない。 私から聞いてみるべき?いや、でも…… 「俺、真希に話したいことがあるんだ。聞いてくれる?」 もしかして、話してくれるのかな? 私の知らない、藍来とハル君のことを。 ずっと前から気になってたんだ。 あの時を思い出す。 ーー信じてもらえないかもしれないけれど俺、藍来でもあるんだーー 一体どうしてそうなったんだろう。 「知りたいよね。俺が藍来でもある理由」 知りたくないわけがない。 でも、本当に聞いても大丈夫なんだろうか。 「聞きたいけど、ちょっと怖い」 「そっか。そうだよね。そうだ、アールグレイ飲みたいんだけど、ある?あるなら飲みながら話そうよ」 リラックスした状態で話したいのかな? 紅茶なら常に置いてるから、あるんだけど。 アールグレイはティーバッグだから簡単。 ティーポットにお湯と一緒に入れる。 湯気が香りと共に漂う。 カラフルな水玉のマグカップに注いで、ハル君に差し出す。 アールグレイを1口飲むと、彼は私に微笑みながら話し始めた。
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加