ー藍来ー昔話

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なんて情けない人間。このまま休んでたって良くならないような気がしてならない。 何で俺はまともじゃないんだ。 バンドだってメジャデビューして8年なのに。 とりあえず準備期間ということで休んでいることにしてるけれど。 もう、嫌だ。 気がついたら毎日、消えたいとばかり考えていた。 バンドなんて、やらなければ良かったと。 俺に咲き誇って群青のボーカルは務まらない。 それどころか、まともですらいられないんだから。 止めようか迷って、言い出せなかった。 俺は自分で何も決められないような奴。 そうだよな、だって今まで流されて生きてきたんだから。 涙が流れてきて、思ったんだ。 もう、消えようって。 苦しかった、いつまでも苦しい。 そのうち何も感じなくなってた。 こんなに簡単に人って死んでしまえるんだって。 自分が居なくなったとしても、誰も悲しまない。 むしろ迷惑にならずに済むんだって。 都合よく考えてた。 命を犠牲にした、それが周りにどんな影響を及ぼすのか知らずに。 34歳で俺はこの世を去った。 最初は実感湧かなかったっけ。 自分の葬式を見るまでは全然死んだ気がしなかった。 メンバーや兄が泣いてるところを見て、ほんの少しだけ死ななきゃよかったって思った。 ファンで後追いしようとする人も居て、自分のしてしまった行いは、多くの人間に強く影響したことを知った。 俺はみんなにごめんなって言ったけど、聞こえるはずない。だって死んでるんだから。 天国にいるであろう両親にも申し訳なかった。 だから俺は天国に行けない。地獄しかない。 どの道、地獄を見るなら死ななきゃよかったと思った。 成仏する気にもなれず、ただなんとなくこの世に居座って。 やがて魂が薄れて消滅するのを待ってた。 学生の頃よく通っていた、歩道橋を意味もなく歩いていたら真希に出会ったんだ。 俺と同じ気持ちを抱いていて、死のうとしてる彼女を放っておけなくて。 ある意味、運命だったんだ。 死んでるのに運命を感じてるなんて、凄くおかしいかもしれないけれど。 強く感じたんだ。赤い糸の存在を。 最初、真希は姿が見えない俺の存在を受け入れられなかった。 死のうとしたから気でも狂ったんじゃないかって。 どうしたら存在を認めてもらえるか。 考えていると、真希のしていたブレスレットが視界に入った。 水晶は透き通っていて綺麗。 俺は水晶のブレスレットに触れ、中に入った。 ひんやりとした感覚が心にあったけれど、やがて慣れる。不思議な感じ。水晶の浄化だったのかもしれない。 真希にはブレスレットに宿る存在だと説明したが信じてもらえず。 初めは怖がられて存在を認めてもらえなかった。 大切にされるようになったのは、会社の嫌な男が消えてからだ。 エンジェルフェザークォーツに宿ったら、水晶の力が使えるようになり、その力で彼女を助けたんだ。 真実を話して受け入れてくれるようになってからは藍来として生きていた話もするように。 それに彼女も昔の辛い話をしてくれたりもした。 だから、お互いに心を開いていたと思う。 でも、自分から命を絶ったのは簡単に言えず。ずっと黙ってたままだった。 今やっと、話せて気が楽になったような虚しいような。 真剣に聞いてくれて、手を握ってくれた。 凄く辛かったんだね。それなのに、いつも助けてくれてありがとう。 そう言ってくれたんだ。
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