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優大君とは、もう恋愛出来ない。
「私、優大君をもう好きになれない」
ハル君の思いが、私の心に響いてるから。
「何で? もう好きになれないって、どうして決めつけるの。僕が冷たいから?」
私の言葉で優大君は悲しい表情になった。顔を見るのが怖くて目をそらす。
ハル君を見ると真剣な顔をしていた。
「優大さんに俺の気持ちを越えられるなら、どうぞ真希を連れて行ってください。まあ無理かと」
「言ってくれるよな。お前の諦めの悪さには本当に参るよ。でもさ、あの時のような酷い真似する奴に真希ちゃんを任せられない」
「俺は真希をどうしようもない位に愛してるんです。この気持ちなら誰にも負けない。絶対に」
「……なんでお前にそんなこと言えるんだよ。僕の方が真希ちゃんを大事にしてるから」
2人がそこまで言ってくるなんて、正直思ってなかった。
優大君が、私をまだ好きなのは分かるけど。
でも、でも。ハル君の気持ちが、心を強く揺さぶってくるから。
「真希、俺を選んでほしい」
「ちょっと待ってよ僕だって……」
「黙ってください。今、真剣な話をしてるんです」
「いや、こっちだって真剣なんだけど」
「言っておくけど。俺は諦めが悪いからね。なんなら、優大さん選んだら略奪するし。きっと真希のことだから、どちらも傷つけたくないって思ってるでしょう。だったら俺が幸せな方へ導いてあげる」
導いてくれるの? 私を?
「心の底から真希を愛してるよ。幸せになる道を歩んで欲しいと思ってる。だから俺を選んでほしい」
優大君がため息をついた。
「……真希ちゃんが決めることだよ。僕だって真希ちゃんが好き。ていうか、いい加減諦めてよね」
隣に居るハル君の目。
さっき目が合った時より優しいし微笑んでくれた。
「真希が俺を選ばないなら、今ここで死んでも構わないよ」
え? 本気で言ってるの?
「本気で死んだって……構わないから……っ」
……ハル君、私に笑いかけてるのに泣いてる。
あの時の顔に似てる。藍来と一緒に満月を見た夜に悲しみを溶かしたような目をしてた、あの感じ。
涙を流すハル君がとても綺麗に見えて、胸が高鳴った。
そこまで言われたら、私……
「ハル君を好きでもいいの?」
「真希、好きになってくれないと。俺、死んじゃう。選んでくれなかったら、本当に……っ」
そんなに私を好きだから弱い人なんだね、きっと。
ハル君を守りたくなっちゃった。
だって本当に死んでしまいそうなんだもの。
大切にしなきゃって思ってしまう。
「私が居ないと駄目なんだね」
優大君まで泣きそうな顔してる、でも言わないと。
「ねえ、優大君。ハル君の傍に居たい」
「止めてよ、こんな奴なんか真希ちゃんを不幸にするだけだよ」
ううん。不幸になんかならない。私は首を横に振った。
「私がハル君を守りたいし、幸せにする」
「え……なんで真希ちゃんにそんなこと言わせるんだよ。晴、ねえ……なんでそこまで真希ちゃんを好きなの」
「俺は真希しか愛せない。だって、愛しくてたまらないんだ。真希の全てが俺のものであってほしい」
「そう……真希ちゃん。本当に後悔しない? 」
「しないよ。だって私が居ないとハル君は駄目なの」
「僕にしといた方が良いと思うけどな」
「だって放っておけない。ハル君は弱い人だから、私が傍にいるの」
そっか。じゃあ諦めるしかないかって、優大君まで泣いてしまった。
私も涙が止まらない。
優大君。私、ハル君を好き。
いつも1番に思ってくれて、怖いこともされたけど。それは本当に私を愛してるから。行き過ぎてしまう。
私が大切に守ってあげなきゃ。
優大君、私は自分が居なきゃ駄目って言ってくれるハル君を愛したい。
だから、ごめんね。って言うしかなかった。
しばらくして、私達は泣き止んで笑い合った。
私、泣き過ぎだって笑われちゃった。
でも、2人だって結構泣いてたもの。
「真希ちゃんを好きになれて良かった。友達に戻るよ。少しずつ。晴の真剣な所を見たら任せたくなったからね。どうかお幸せに」
優大くんはとびきりのかっこいい笑顔を見せて帰っていった。
ねえ、優大君。
出会えて、恋ができて良かった。
思い出すだけであたたかい気持ちになる。
私は別の人を選んだ。
でも、優大君との思い出は大切なままだよ。
本当にありがとう。
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