ー晴ー 一生をかけて

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プロポーズをすんなりと受け入れてくれたのもあって、テンポよく進めようとしていた。 真希の両親に挨拶をする。 お父さんは俺がミュージシャンであることを良く思っておらず、困ってしまう。 そうすると、お母さんが笑顔で言った。 「いいじゃないの。真希が選んだ人なのよ。任せてみない? 」 笑ってると親子だな。似てるよ。真希の笑顔はお母さん似。女神のような微笑み。 「だがな。ミュージシャンっていうのは、あまり良いイメージがない。ほらかなり前、女優とスキャンダルになった男が居ただろう。ああなっては困るんだよ」 まさか、優大さんの話がここで出てくるとは。 でもあれはただ絡まれたのを助けて、はめられただけだからね。 まあミュージシャンに悪いイメージはつきものだからな。 真剣に思ってるから引く気は一切ない。 大切にしてる気持ちを伝えるしかなかった。 「ふふっ。いい人と出会ったのね。真希。お母さんは賛成よ。その代わり、たくさん幸せになりなさい。お父さんはあたしが説得しとくわ」 真希のお母さんは優しい。それだけじゃない、人を受け入れる心の強さがあるんだ。 その日の夜、俺はお父さんに2人きりで酒を飲まないかと誘われた。 凄く緊張する。何で2人きりなんだろう。 「男同士で話がしたくてな。まあ、飲みなさい」 日本酒をいただく。あまり、酔わないようにしないと。勢いにのまれるな、俺。 「真希はお前さんを好きかもしれんがな。簡単には認めんぞ」 「凄くおこがましいですが、幸せにする自信があります」 驚いた顔をされた。まあ、そうだよな。でも控えめにするなんて、無理だ。ここで引いたら男じゃない。 「幸せにするのは当たり前だ。娘は人間関係で辛い思いをしていたからな。明るくなって安心してたんだ、私たちは。その笑顔を大切に出来るのか? 」 「真希さんが明るいのは、繊細な優しさが心にあるからです。人前では笑顔でいますが、苦労や努力をたくさんしている。俺は全てをかけて、護りたいんです」 幸せにしたいんだ。俺が全てを捧げる。 覚悟だってあるんだ。だから、真希のお父さんに認めてもらうまで、絶対引かない。 「熱意は分からんでもない。妻が言っていたよ。あんなに情熱的な人が真希の旦那になるのも悪くないと。でもな、同じ男として思うんだよ。結婚は情熱だけじゃどうにもならん。お前さんの覚悟を見せてくれないか」 俺は本気だ。簡単に考えてなどいない。 「結婚できないなんて考えられません。認めてもらうまで俺、しつこいですよ。真希さんを愛する気持ちなら誰にも負けないですし、やっぱり幸せにする自信しかありませんので」 「まあ、その気持ちなら認めよう。泣かせたりしたら、私は許さんぞ。ちゃんと幸せにしなさい。娘をお前さんに任せる」 「ありがとうございます! 」 「もし、真希のことで悩んだら来なさい。私の酒に付き合ってくれるなら話はいくらでも聞く」 その時、お父さんの笑顔を初めて見た。 娘が嫁にいくとなると寂しい気持ちになるな。 そう涙ぐみながら、俺の肩を叩いた。 頑張れよ。そう言ってくれた気がして嬉しい。
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