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学校から帰ると家には誰もいなかった。
私は特に気にしなかった。
母は仕事でいないのが普通だったから。
姉がいないのはどうせ友達とどこかで遊んでいるからだと思ったからだ。
私はゲームをして一人時間を潰した。
異変に気づいたのは母が先に帰ってきたからだった。
時間はいつの間にか六時を過ぎていていつもなら姉はとっくに帰ってきていた。
姉を探すためのパトカーが私の視界に入り不安を駆り立てた。
姉が見つかったのはそれからしばらく経ってからだった。
私はその時思った警察は無能だと。
なぜなら姉は家からそう離れていない公園にいたからだ。
姉から電話が掛かってきて自らが助けに行ったからだ。
電話越しの姉の声は震えていた。
内容は足が動かないから迎えに来てほしいというものだった。
迎えに行くと姉は救急車が必要な状態だった。
ゆっくりと公園に近づいてくる救急車のサイレンの音に恐怖を感じた。
後から知ったことだが姉は近所の男の子に暴力を振るわれ脊髄が損傷していた。
脊髄損傷は背骨の脱臼や骨折によって起こるもので最悪は人工呼吸器なしには呼吸ができなくなる。
姉はまだマシな方らしく感覚がなくなって歩けなくなるだけだった。
それからは車椅子を使うようになり、そのうち鬱病になって学校にも行かなくなった。
ひどい話で暴力を振るったそいつを母はお金がかかるからと訴えなかった。
そいつは逃げるようにすぐ遠くに転校していきどこにいるのか分からない。
数十年経った今でも会ったことのないそいつを何度も何度も殺す夢を見る。
姉が助けを求めた公園であるときは姉の姿を映す汚い目玉をえぐり出したり、
あるときは姉を蹴ったり殴ったりしたであろう腕と足を折ったり、
あるときは姉の手を引きそいつから遠ざけたり。
そいつが泣き叫び逃げようとあがく様をみると心がスッと楽になった気がした。
そんなことをしても現実は変わらないのに。
現実では私は姉が暴行を受けていたとき学校でのんきに笑って友達と楽しく遊んでいたのに。
気づけなくてごめんなさい。
守れなくてごめんなさい。
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