キスして抱きしめて

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 週末だけと決めずに、週半ばの夜に数時間だけ、どちらかの家でまったりと過ごすのも好きだった。そうすることで週後半の活力になるからだ。 「武尊、何か最近疲れてる感じするけど大丈夫?」 「ああ、俺も年かな。最近やたらと目がかすむし、肩が凝ってるのか頭痛も酷くて」 「そう……」 「まあこうやって真琴に会うと、精神的には癒されるんだけど」  武尊が自分と同じ気持ちでいることに、嬉しさが込み上げた。 「じゃあ、次のデートは温泉なんてどう?」 「いいねえ」  行き先を決めるのは、相変わらず真琴だった。 「真琴、週末って何か予定ある?」 「ああ、会社の飲み会があるの」 「あれ? またあんの? 先週もあったよな?」 「うん。今度のは新入社員の歓迎会なの」 「へえ。全員参加?」 「え? まあ強制ではないんだけどね」 「それって男もいるんだろ?」  武尊の質問責めが続く。 「うん、まあ……半々ぐらいかな」 「帰り迎えにいこうか?」 「ううん、大丈夫だよ。何時になるかもわかんないし」 「そっか。あんまり飲み過ぎんなよ」  質問責めに合い、よからぬ心配をされていることが癪に障った。 「ねえ、何が言いたいの?」 「別に」  武尊がそういう時は、不満がある時だ。 「何かさ……私ってそんなに信用されてないの?」 「そんなんじゃねえよ!」 「武尊って、ちょっと女々しいとこあるよね」  言わなくてもいいことだ。 「は? 何だよそれ。誰と比べてんだよ」 「誰とも比べてないよ! 武尊、もっと自信持ちなよ。そんなだと、男としての魅力が半減するよ」 「俺は男らしくないからな」  そうやって、武尊はすぐ卑屈になる。 「武尊のそういうとこ、すごく嫌い」  言い過ぎたとわかっていた。普段ならこうはならない。PMSのせいだろう。
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