キスして抱きしめて

5/11
前へ
/11ページ
次へ
 ゴールデンウィーク明けの日曜日、約束通り温泉デートに出かけた。カップルに人気の大型温泉施設だ。  もちろん真琴も楽しみにしていたが、今回は武尊の疲れを癒すことが一番の目的だった。疲れている姿を見せまいと無理しているのが見てとれるほどに武尊が疲れきっていたからだ。  当初はゴールデンウィークに予定していたが、いくら温泉とはいえ、人混みではかえって疲れてしまうのではないかと考えて、ゴールデンウィークはのんびり過ごすおうちデートに変更したのだ。  館内に到着すると、まずは浴衣選びだ。 「どれにしようかな……こんなにあると迷っちゃうよ」  種類が多くて真剣に悩む真琴が不意に顔を上げると、武尊の優しい眼差しがあった。 「ゆっくりでいいよ」  そう言う武尊の浴衣を選んだのも、もちろん真琴だった。結局、真琴も武尊と同じテイストのレトロ柄の浴衣に決めた。  広い館内を見渡すと殆どがカップルで、所々に設けられたフォトスポットで撮影する姿が見られた。  早速浴衣に着替え、庭園を散歩してからゆったりと足湯でくつろいだ。肩を寄せて、時々見つめ合う。何と言っても、人目を気にせず堂々といちゃつけるところがいい。  それから一緒に岩盤浴で汗を流し、その後の温泉は当然離ればなれになったが、数種類のお風呂と庭園が一望できる露天風呂で温泉旅行気分を味わうことができた。  そうして心も体もリフレッシュできた二人は、帰路に着いた。   「うち寄っていく?」  マンションの前に到着した車内で武尊に尋ねた。 「いや、明日朝早いんだ」 「そっか。温泉入ったし今日はきっとぐっすり眠れるね。明日からまた頑張ろうね」 「そうだな」  いつものように軽くキスを交わして真琴が車を降りると、何故か武尊も車から降りてきた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加