第六王女の襲来

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第六王女の襲来

 キリアムが帰ったすぐ後に、私は妹と彼女の侍女達という軍団の訪問を受ける事となった。私にお付きの侍女が残っていれば、彼女達など門前払いだったろうに。    さて、私の部屋に押し入った彼女達であるが、部屋に押し入らねばならないと考えた正当な理由があったらしい。 「え、なにその厭らしい催し」  私は妹から正当な理由を聞いた途端に、思いっきり吐き捨てていた。  ちょっと品が無さすぎじゃないかしら?  内容とはこうだ。  貴族社会ではパーティが好まれる。  自分で金を出さないパーティならば、尚の事好まれる。  よって、私達お披露目会の前夜にパーティを開催するのだというのだが、内容が私には不適切この上ないと思わせるものなのである。  結婚前の最後のお遊び、独身最後のパーティという事だそうだ。よって、私の夫は呼ばれず、私は独身男性達のひしめくパーティ会場に、やはり私の友人という設定の独身女性達と閉じ込められるらしいのだ。 「馬鹿らしい。嫌ですよ。出ません。誰が計画したの、そんな馬鹿なこと」 「お姉さま。痣を気にされているのね。大丈夫よ、今のようにガーゼで頬を覆われていらっしゃれば、どなたも気になさらないわ」  痣があるのではなく、染料がようやく消えて痣が無くなったからこその包帯だ。  醜いからとバルドゥクに嫁される事を許されたのならば、美貌が戻ったと知られてバルドゥクとの仲を裂かれたくないと考えての小細工なのである。  ついでに言えば、もう一度結婚式をするのであれば、最高の状態で彼の元に嫁ぎたい、という私のくだらない自尊心の後押しもあったのだが。 「わたしは、しずかに、ここですごしたい、だけなの」 「ひどいわ。お姉さまの事を思って、わたくしが計画してまいりましたのに!」  甲高い悲鳴のような声を上げて泣き出したのは、あの、美しき乙女のセシリアである。  しなを作ってさめざめと嘘泣きをする彼女に彼女の侍女達は慰め始め、なんてこと、私に対して敵愾心を込めて睨んでもいるでは無いか。 「えっと、パーティだったら、普通の独身者パーティにして、あなたが中心になればいいじゃない。私はほら、足がこんなだし」  右足を持ち上げて義足を見せると、妹は悲鳴を上げて気を失い、彼女は侍女達に担がれて部屋に戻っていった。  部屋には私ただ一人。 「あ、断りを了承されていない! ああなんてこと!」  あまり交流の無かった妹は、かなりしたたかな女であったようだ。  私は有無を言わさず出席させられると諦めるしかなく、けれど私は自分が主役なのだからと、私の友人に招待状を出す事にした。  身重なエーデンではなく、バルドゥクに暇を取らされた侍女の一人、エーデンの妹のアリアだ。エスコート役に男爵家の子息を連れてくれば、とてもとても花を添えるはずだ。  焦げ茶色の髪に焦げ茶色の瞳をした、長身で素敵な方と聞いております。  彼を連れて来て下さいね。  これでちゃんと伝わるといいけれど、本物の方を連れて来ないでね。  ああ、彼に会いたい。
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