心をくれると思っていた

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「陽愛……。今日は、会える?」 「うん。お店に行くね」 「待ってるよ」 「うん」 ホストクラブ【ルビー】のNo.1ホストの皇雅人との出会いはカフェだった。 『陽愛、悪い。今日行けなくなった』 「また?(だい)ちゃん、最近そればっかだよ」 『悪い。この埋め合わせは必ずするから……』 (もう終わった?大樹(だいき)早く) 『聞いてる?陽愛』 「うんうん。わかった」 いつだって、そうだ。 プー、プー、プー。 どうやら私は、誰かの一番にはなれないらしい。 でも、そんなのは当たり前だ。 「お持ち帰りですか?店内で召し上がりますか?」 「お持ち帰りで」 2ヶ月前にオープンしたばかりのカフェ(シュガー) 大好きな人と一緒にハートのパンケーキを食べると一生一緒にいれるってジンクス。 真に受けてきたけど……。 秒で終わった。 一生って、一瞬の事だったのかも。 「ありがとうございました」 「ありがとうございます」 ドンッ……。 「あっ!!」 「あんた何してんのよ!雅人、お怪我はありませんでしたか?」 「大丈夫だよ。そんな柔じゃないから」 「あんた雅人にコーヒーがかかったじゃない」 「本当だわ!白いセーターにシミがついてるじゃない」 「す、すみませんでした。今、クリーニング代を」 「いいよ、いいよ。大丈夫だから」 「ふざけないでよ!クリーニング代払ったらどうにかなると思ってんの?」 「みんな、やめなよ。俺は、大丈夫だから。あっ、ほら先に行ってて!」 雅人と呼ばれた男の周りにいる女の人達は、シュガーの中に入っていく。 雅人という男だけが1人になった。 「すみませんでした。クリーニング代、すぐにお支払いします」 「いいよ、いいよ。その代わり、1度だけここに遊びにおいで」 渡された名刺。 皇雅人と書かれている。 「ルビーのNo.1してる。明後日、誕生日で。こうやって縁があった子を誘ってるんだよ!気晴らしに遊びにおいで」 「さっきの人達は?」 「あーー。さっきの女の子は、俺のお姫様達だよ」 「お姫様達?」 「そうそう。みんな俺を応援してくれてるんだ。じゃあ、行くね」 「はい」 お姫様……。 そのお姫様は特別なわけじゃないんだ。 みんな、私と同じだ。 好きな人の特別になるのは難しい。 そんな事、ずっと昔から知っている。 だから……。
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