序章

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序章

  「それでは皆さん、私の目をよく見てください。いいですか? あなたたちはこれから一年間、私の思い通りに動いてもらいます」  高校の入学式の日。黒板の前に立った若い女教師は、教室中を見渡してからそう言い放った。 (なに言ってんだ、こいつ)  いきなり訳のわからないことを口走る担任教師に、俺が最初に抱いた印象はそれだった。  しかし後にわかることだが、この女はどうやら催眠術が使えるらしい。子どもだましや手品の類ではなく、正真正銘、本物の催眠術だ。  彼女の言った「思い通りに動く」というのは、まさに彼女の催眠術によって生徒(おれたち)が意のままに操られることを示している。  何を馬鹿なことを、と笑われるかもしれないが、これは冗談でもなければ妄言でもない。  すべての始まりは、この日の朝。  四月六日の月曜日。  午前八時一分から始まる。  
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