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「大丈夫だよ、八尋くん。この世界はね、八尋くんが思ってるほど怖い人ばかりじゃないから」
ざあっ、と辺りに風が吹いて、桜の花びらが舞う。
視界が薄桃色に染まって、乃々の小さな体はたちまち攫われてしまいそうに思えた。
乃々は昔からこうだった。
純粋でまっすぐで、俺のようにすぐ人を疑ったりしない。
「……乃々は逆に能天気すぎるんだよ。人間ってのは怖いぞ。表面上はいくら善人を装っていても、腹の中では何を考えているかわからない。特に、どうでもいい相手に対してはどこまでも冷酷になれるんだからな」
「それは極端な例だよ。みんながみんな、そんな冷たい人ばっかりじゃないよ? 世の中には優しい人がいっぱいいるんだから。そんな風に警戒しないで、もっと楽に構えてた方がいいよ。じゃないと疲れちゃうでしょ?」
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