第一章

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            ◯  正面玄関の所まで行くと、そこには人だかりができていた。  どうやら校舎の壁にクラス発表の紙が貼り出されているようで、新入生たちはそれぞれ自分の名前がどこにあるのかを探している。 「あ。俺、A組だ」  ずらりと並んだ名簿の中に、『七嶋(ななしま)八尋』の文字を見つけた。  俺が呟いた数秒後、隣の乃々は元気のない声で言った。 「わたし、C組だ。……八尋くんと離れちゃった」  しゅんとする彼女の様子に、思わず苦笑する。 「家に帰ったらいつでも会えるだろ。そんな顔するなよ」  つい普段の調子で俺が言うと、周りの数人がちらりとこちらを見た。  先ほどと同じ、野次を飛ばす視線だ。 (やべ)  クラスもわかったことだし、さっさとこの場を離れたい。 「と、とりあえず教室に向かうか」  
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