第一章

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  「おーい、八尋(やひろ)くーん! 待ってよー!」  と、そこへ今度は聞き慣れた声が届いた。  八尋、と俺の名を呼ぶ声。  後ろの方からだと気づいて、俺は足を止めて振り返る。  すると視線の先には予想した通り、一人の少女の姿があった。  周りと同じ、紺色のブレザーにチェック柄のリボンとスカート。  ボブカットにしたふわふわの髪を揺らしながら、小柄な彼女は嬉しそうに手を振って走り寄ってくる。 「乃々(のの)……」  代々木(よよぎ)乃々(のの)。  俺の幼馴染だ。  彼女はずいぶんと遠くから走ってきたようで、俺のもとへ辿り着くなり、肩で息をしながら項垂れていた。 「はー、やっと追いついた! もう。先に行っちゃうなんてひどいよぉ」 「いやいや。登下校は別々でって、何度も言ったよな?」  俺が確認のために聞くと、彼女は呼吸を整えながら不服そうに顔を上げて反論する。  
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