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「おーい、八尋くーん! 待ってよー!」
と、そこへ今度は聞き慣れた声が届いた。
八尋、と俺の名を呼ぶ声。
後ろの方からだと気づいて、俺は足を止めて振り返る。
すると視線の先には予想した通り、一人の少女の姿があった。
周りと同じ、紺色のブレザーにチェック柄のリボンとスカート。
ボブカットにしたふわふわの髪を揺らしながら、小柄な彼女は嬉しそうに手を振って走り寄ってくる。
「乃々……」
代々木乃々。
俺の幼馴染だ。
彼女はずいぶんと遠くから走ってきたようで、俺のもとへ辿り着くなり、肩で息をしながら項垂れていた。
「はー、やっと追いついた! もう。先に行っちゃうなんてひどいよぉ」
「いやいや。登下校は別々でって、何度も言ったよな?」
俺が確認のために聞くと、彼女は呼吸を整えながら不服そうに顔を上げて反論する。
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