第一章

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   しかし何も知らない第三者から見れば、俺たちの関係がどういう風に映るかはわからない。  仲の良い友人同士か、あるいはカップルか。  前者ならともかく、後者の場合、周りから好奇の視線に晒されることは目に見えている。  お似合いかどうかとか、顔面偏差値はどうかとか。  勝手に品定めされて、話のネタにされるに決まっている。  そして事実、坂道を上っていく周囲の新入生たちの目はチラチラとこちらを窺っていた。 『ちっ。入学初日から見せつけてんじゃねーよ。虫唾が走る』 『地味なカップルだな。まあ女の方は顔は可愛いか。やけに幼く見えるけど』 『男の方は冴えない感じだな。あんな奴でも彼女がいるなら俺だって……』  早速、俺の脳内では野次が飛び始める。  実際のところ彼らがどう思っているのかはわからないが、あの不愉快そうな表情からすれば大方こんなものだろう。  
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