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「サキ隊長が……?」
「はい。怖い、逃げたい、もう嫌だと何度でも思います。今でも」
王家直属の魔法部隊、その最上位に位置する隊長でもそんなことを思うのか。でも、隊長は――、
「でも……隊長はやめてない……ですよね」
僕の言葉に隊長は「はい」と頷いた。
「それは……なぜですか?」
「私が戦うことで、少しでも誰かを救うことができるかもしれない、そう思うことで、足が前に進むんです。もう一度、戦おうと」
凛とした瞳から意志の強さが伝わってくるようだった。
僕はリサが「私を救ってくれた人たちのように」と言っていたことを思い出した。
誰もがそんな思いを抱いて魔法部隊を目指すのか。
僕は自分が随分薄っぺらい存在に思えてきて、俯いた。
「ユーリさん、貴方は仲間のために足を踏み出すことができました。私と同じです」
その言葉に僕はなんだか泣きそうだった。
「で、でも今回のミッションは失敗なので……」
自分たちの力で乗り切ったわけではない。今回のミッションはクリアとは見なされることはないと僕は思っていた。
「知ってますか? 入隊条件は10回のミッション成功だけが条件じゃないんです」
「はい。たしか、部隊の閣僚からの特別な推薦があれば……」
「はい。ですから、一番隊隊長である私からユーリさんとリサさんを推薦しました。今回のミッションは免除です。追って正式な配属通知がでます」
サラッととんでもないことを隊長は言った。呆気にとられている僕に隊長は微笑む。
「……受けられません! リサはともかく、オレは……いや僕は……」
「ユーリさん」
僕の言葉を隊長が遮った。そして、ゆっくりと立ち上がった。
「貴方には一日も早くそんな人を救っていただきたいんです。恐怖と向き合う強さを持った貴方なら大丈夫です。私たちは貴方を待っているんです」
そう言うと、隊長は僕に右手を差し出した。いや、差し出してくれた。
この手を握り返すことは勇気がいることだった。
覚悟が必要だった。
これから始まる日々は、きっと今まで以上に過酷な日々だ。
でも、ここで立ち止まっていたままでは何もできない。もっと僕は見たり、知ったりすべきことがある。その最短の道は、ミッション遂行じゃない。
「よろしくお願いします」
僕をサキ隊長の右手を握り返した。
この瞬間、僕は王家直属の魔法部隊一番隊所属となった。
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