魔法部隊への道

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*  もうすぐだ。  このミッションさえクリアすれば、明日の食べ物もないような暮らしは終わり、約束された未来が手に入る。  もう直属部隊は目の前だ。手を伸ばせば届く位置にまで来ているんだ。 「……大丈夫?」  隣から声が掛けられた。赤茶色の髪の女の子だった。電磁魔法部隊の子だった。 「え?」 「何か怖い顔をしていたから」  何かしら表情に出ていたのかもしれない。僕も未熟だ。 「いや、大丈夫だよ」 「……そうですか」  それ以上は特に質問されることはなかった。そこまで不審ではなかったのかもしれない。 「グエアアアアァ!!」  突然、決して人ではない獣の大きな鳴き声が聞こえた。  犬や猫などとは全く違う空気の張りつめるような叫び――竜だ。  チームのメンバーにも緊張感が走ったのがわかった。 「焦ることはない。作戦どおり行こう。電磁部隊は二手に分かれる。攻撃部隊は隊列を組みながら動くぞ」  僕たちは、ゆっくりと距離を詰めていく。  いよいよ竜の声が近くなり、奴が少し動くだけで木々の葉が擦れる音が響く。先に確認したメンバーからおおよその竜の大きさがわかり、大人二人分程度の大きさだということがわかった。  電磁部隊が竜を挟み込むように回り込む。  事前に示し合わせた時刻に達した瞬間、一斉に電磁魔法を竜に向けて放った。  火花があちこちで起こり始め、竜は驚いたように身を震わせる。  残念ながらこの電磁魔法ぐらいでは竜を倒すことはできない。院生の魔法力では小型と言えど、竜を倒すほどの威力はない。  しかし、棘だらけの場所から人が逃れたいように、竜であっても電磁魔法の連続は避けたいと考える。竜は電磁魔法の襲ってこない方向へと逃げ始めた。  その道こそが最も危険とは知らずに。 「攻撃部隊!」  六人の攻撃魔法を担当する小チームは既に呪文の詠唱に入っていた。  風魔法が二名、氷魔法が四名いる。森の中での戦いなので炎の魔法使いは帯同していない。  呪文の詠唱が終わり、一斉に風の刃や氷の矢が竜をめがけて放たれる。竜が悲鳴のような叫びをあげて身を崩していく。  そこにとどめとばかりに僕もまた風の刃を放った。避ける体力のなかった竜はそのままその場に大きな音を立てて倒れた。地面が揺れる中、勝利を確信し、僕は笑みを浮かべた。
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