魔法部隊への道

8/13
前へ
/13ページ
次へ
*  無理。  チームの指揮を執る人間が使ってはいけない言葉だ。  指揮官が戦意を喪失すれば、そのままチームの戦意も喪失し、全滅する可能性だってあるからだ。  竜が六枚の翼をはためかせ、地に降り立った。  大きな振動で、地面が揺れる。  いまの僕の頭の中には「恐怖」しかなかった。いままでのミッションではこんな命の危機に瀕したことはなかった。すべて作戦通りに進めてクリアしてきた。  いまは何の手だてもない。僕はいま初めて「戦場」に恐怖していた。 「貴方が逃げたいなら逃げればいい」  彼女は腰に携えていた剣を抜いた。決して長くはない、いわゆるショートソードに見えた。 「私は残る」  耳を疑った。  あの巨大竜に何ができるというんだ。攻撃魔法を打っても通じない。何か特殊なアイテムがあるわけでもない。 「正気か?」 「ここで私だけ逃げたら仲間(みんな)はどうなるの……? 私は残るよ」 「オマエが……? この状況で? 何が出来るっていうんだ?」 「私は、かつて救ってくれた人たちのように、誰も見捨てたりはしない」 「オマエは……」 「リサ = フォンテーヌ」 「は?」 「『オマエ』じゃない。貴方と同じ魔法部隊を目指す高等学院生。名前ぐらい覚えてくれる?」  リサと名乗った女の剣の先端が淡く光り始めた。  そのとき、僕は気がついた。  こいつの剣は、ただの剣じゃない。  これは、魔法力を通わすことで効果を発揮する『魔法剣』だ。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加