魔法部隊への道

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* 「魔法剣」、魔法使いは剣士のような腕力がないので剣で戦うことはできない。しかし、特殊な剣に魔法力を通わせることで威力を増大させ、剣士以上の切れ味を出すこともできる。高度な魔法力が必要だが。 「オマエは……魔法剣(それ)で竜の皮膚を切ることができるのか?」 「『オマエ』じゃないと言ったけど?」 「リサ」 「魔法力を全開すれば傷ぐらいは……と信じている」 「もし、それが本当なら」 「え?」 「活路が見えた」  僕はもう一度、立ち上がった。 「活路……?」 「あのタイプの竜は、首と翼の境界線の下に『心臓』がある」  僕は竜を指差しながら言った。 「首の後ろから魔法剣を刺すってこと? でもどこまで刺さるかは……」 「そこまで深く切れなくてもいい。これが入るぐらいの深さがあれば」  僕は右手の甲をリサに見せた。薬指の青い宝玉の指輪を見せたかったからだ。 「これにオレの魔法力が圧縮されて日々溜まっていっている。過去三年ぐらいの分が圧縮されている。この圧縮を解けば」 「大きな爆発を起こせる……。それで心臓を……?」 「そうだ」 「了解」  リサが走り出した。細かい作戦を話している暇などないと彼女はわかっているのだ。  竜がゆっくりと地面を歩きはじめる。一気に僕らを襲わないのは、知性のある竜は人間を弄ぶというからこそか。いまはそれが好都合だ。  僕はリサが走る方向と逆方向に風魔法を放った。木々が吹き飛んだ。  竜の注意が吹き飛ばされた木に向く。  その瞬間を逃さずにリサは竜の尾から翼のほうへと駆けのぼっていく。  首と翼の境界線に達したリサは剣を振りかざした。そして、その紅く光る剣をリサは竜の首の後ろに突き刺した。  金属と金属がぶつかるような音がした後、青い血が僅かに吹き出るのが見えた。  竜がうめき声をあげる。  リサを振り払おうと暴れはじめた。あの腕では直接攻撃はリサに届かないが、空にでも飛ばれてしまったら厄介だ。 「氷柱結界!!」  僕は竜の足元を氷の柱で覆いつくした。足元が凍りつき竜がよろめく。長くは持たないかもだがすぐに飛ぶこともできないはずだ。    僕も急ぎ、竜の尾から首へと駆けあがる。  前方にリサが見えた。リサは僕の姿を見つけると剣を引き抜いた。そして剣を持ち直し、 「あああああ!」  剣が一層紅く光った。おそらくは全魔法力がこめられたその剣をリサは振り下ろした。更に傷が深くえぐれた。  この一瞬しかないと僕は外した指輪を傷口に埋め込む。竜の叫びが聞こえる。 「これで終わりだ!」  僕は解呪の印を結んだ。指輪がチカッと光った瞬間、僕はリサを引っ張り、竜の背中から飛んだ。  地面にリサを伏せさせながら、僕も身を伏せる。  空気が揺れた。  次の瞬間、大きな爆発音が響いた。その音は何重にも響いた。  爆発音が収まり始めた頃、僕は顔だけを地面からあげた。  氷の柱が砕ける音も聞こえた。そしてさらに大きな音が立てて、竜は地面に倒れた。轟音とともに土煙が舞い、地面が大きく揺れた。  ほこりの舞う中、僕は勝利を確信し、右の拳を握った。
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