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お店に戻ったアンナは、まずは常温に戻した高級バターを四角く薄い板状にして冷蔵庫に入れる。
「パンに入れる訳じゃないの?」
「あとでです。
さあ今回は作業も時間もたくさん必要だから覚悟してくださいね!」
今回はバターの味を生かしたいので生地はシンプルにしたい。
中力粉を100%、砂糖に、お塩、麦芽シロップ、酵母菌、そしてこちらにもバターを少し入れる。水と牛乳はかなり少なめだ。
「パンの生地って随分固いのね」
「いつもはもっと柔らかいんだ。この生地は特別に固い生地だね」
ファッレの言葉にクスクスが得意気に教えると、ファルがさらに質問する。
「何のために今回は固いんだい?」
「えっと、それは…」
クスクスは助けを求めるようにアンナをチラリと見た。
「今回は間にバターを織り込んでから焼くのよ」
アンナがそう答えると3人揃ってふんふんと頷いた。
アンナは捏ね上げた生地を1時間発酵させたあと、冷凍室に入れてしまう。
「冷やしてしてしまうの?」
「うんと時間がかかると言ったでしょう?」
ー1時間後
冷やした生地を四角く伸ばす。
生地と同じ固さにまで戻した、白くてなめらかな高級バターを生地で包む。
「そしてこれを薄く伸ばします」
包まれたバターごと帯のように細長く薄く伸ばす。実はアンナも手作業でクロワッサンを作るのは初めてだった。
4つ折りして、再び冷やす。
冷えたらまた伸して4つ折り、冷やす。
「まだかかるの?」
双子は飽き始めたようで肘をついていた。
「焼き上がるのは明日になるわ
もう遅いし帰っても大丈夫だからね」
アンナがそう声をかけると、ファルとファッレは顔を見合わせる。
「どうしよう、帰る?」
「うん、そろそろ帰ってママの手伝いもしないと」
「そうね、怒られちゃう」
話し合いの結果が出たようだ。ファルとファッレは「よろしくね」と言って手を振ると走って帰っていった。
「殿下も無理しないでくださいね」
「僕は最後まで見てくよ。作戦のリーダーだしね」
外はもう夕方から薄暗くなり始めている。
クスクスは片付けを手伝ってくれたりボードゲームをしながら待った。
そして、最後の伸ばす作業だ。
冷えた生地をなるべく薄く長方形に伸ばし、大きな包丁でサイドを切り落とすと三角形に切っていく。
そしてその切った三角形を、底辺の方からくるくるくるっと巻いたらクロワッサンの形になる。
「美味しくできるかな」
クスクスはくるくるする作業をしながらそう呟いた。
「ギャフンと言うほど美味しくなりますよ!でも今日はここまでです。一日冷凍して休ませないと巻いた部分がほどけてしまうの」
ちょうど作り終わったものを冷凍室に入れたところで、王宮の使用人が帰りの遅いクスクスを迎えに来た。
「また明日ね!」
クスクスは怒っていたことをすっかり忘れて帰っていった。
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