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きちんと冷ましてからカゴに入れて城に持ち帰る。
焼き立ても美味しいが、きちんと冷ましても美味しいパンが本物だと聞いた。
クスクスにはわからないが、焼き立てすぎると酵母の匂いがキツいとアンナは言う。
夕方、パスタの乗った馬車が到着したのが窓から見えた。
クスクスは走って門まで向かう。
「兄上おかえりなさい!」
「クスクス!背が伸びたなあ」
クスクスは嬉しさのあまり飛びついて抱きつく。
2年ぶりに会うパスタはなんだか逞しく大人びて見えた。
あとからゆっくり王妃と国王も出迎えにやってくる。
「おかえりなさい、お前のために特別な夕食を準備をしたんですよ」
「修行の話をゆっくり聞かせておくれ」
「父上母上、ただいま戻りました。
お話ししたいことがたくさんあります」
2年ぶりに家族揃って食卓を囲む。
クスクスは自分からパスタにレーズンロールを渡した。
「これは?」
「僕が作ったんだ。
パンって言う食べ物で凄く美味しいんだよ。兄上の好きなブドウを入れてみたんだけど…」
「クスクスがこれを?凄いな!
じゃあいただきます!」
パクッと食べる。
香ばしい小麦の香り、甘くてふわふわの生地、そしてその中にパスタの大好きな甘酸っぱいブドウが散りばめられている。ほんのり香るスパイスが良いアクセントだ。
パスタは無言のままパクパク食べきると、ほうっとため息をついた。
「…こんなに美味しいものは初めてだ…!」
クスクスは照れ臭くて鼻を擦る。
「私たちもそのパンを食べたいわ」
王妃がそう言うのでクスクスは得意気にレーズンロールを配った。
国王も王妃も顔をほころばしながら食べている。
「バターをつけてもまた美味しそうだな」
「ありがとうクスクス、素晴らしいご馳走ですね」
「こんなもの作れるなんて凄いじゃないか」
パスタがもうひとつレーズンロールを手に取りながらそう言う。
「パンの師匠がいるんだ!」
「へえ会ってみたいな」
「明日紹介するよ、アンナって言ってとても不思議だけど素敵な人なんだよ!
でも、それより今は兄上の話を聞かせてよ。異国はどうだった?修行は?」
「そうなんだ、とても刺激的だったよ。僕の最初に行った国は…」
その日の夕方はレーズンロールに彩られ、楽しいく温かい時間が流れていった。
パンによる家族の笑顔は、改めてクスクスにパン屋になりたいと思わせた。
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