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由紀也が家まで送ってくれることになった。
「一人で帰すのは心配だし、いろいろと話したい」
由紀也の運転する自動車の中で、優月は由紀也に訊かれるがままに自分の状況を話し始めた。
父親に勧められて婚約したこと、ドレスのことがきっかけで隆司との破談を願うも、父親にはわかってもらえないことを説明する。
「彼との結婚は絶対にやめたほうが良い」
「さすがに、今日のことでパパも破談を許してくれるはずよ、たぶん……」
「たぶん?」
内心不安がないでもない。
(パパは味方じゃなかった……。もしも、わかってくれなかったらどうしよう)
昼間のことを思い出し、また、優月は涙ぐむ。由紀也は心配げな目を向けてきた。
「優月、何があったの? 言ってごらん」
「パパも私のことを、自分勝手で我が儘って………。やっぱり、私が悪いのかな………」
「優月、それはちがう。優月は悪くない。優月が悪いというのは、言いがかりでしかない」
由紀也の言葉に優月は救われる。
思えば、優月は、最初に由紀也がはっきりと麗奈が悪いと言ってくれたときから、それを支えにしてきたように思えてくる。由紀也のおかげで自分は悪くないと、思えてきたのだ。
「私、由紀兄さんのおかげで卑屈にならないで済んだのかもしれないわ」
自動車を降りる前、連絡先を交換すると、由紀也はもう一度、念を押した。
「優月、家がつらいなら、俺のところに来ればいい。いっそ、今日からでも俺のところに来てもいいんだよ」
もう、家には帰りたくない、それが今の優月の本心だ。なので、由紀也がそこまで言ってくれるのは優月にはありがたかった。
(本当に困ったら、由紀兄さんのところに行こう)
「何かあったらすぐに連絡して」
「うん、ありがとう、連絡する」
そう言って優月は自動車から降りた。
そのときの優月は、すでに本当に困る状況にあったことに気づいていなかった。
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