145人が本棚に入れています
本棚に追加
芹とデザイン
芹は今日も社長に呼び出され出社をする。
目的はプレゼントの催促だろう。
(全く子どもじゃないんだから…)
芹は辟易しながらエレベーターで最上階まで昇る。
社長室に入るなり、芹はプレゼントを取り出した。
「はいパパ、ハッピーバースデー」
芹はラッピングされた箱を社長の机にコトンと置いた。
社長がパァッと顔を明るくてそれを持ち上げる。
「ありがとう芹ちゃん!わぁ、嬉しいなあ!」
わざとらしいくらいに大喜びをした社長はビリビリと子どものように派手に開ける。
「愛娘からこんな良いもの貰えるなんて…うちの子はなんて親孝行なんだろうね…」
ここまで喜ばれるとむず痒い。芹は顔をつんとさせながらも頬を掻く。
「見ろ冴島君!イヤホンだぞ!」
書類整理をしている冴島は一瞥すると「よかったですね」と心にも無さそうな声色でそう答えた。
社長はそんなこと気にもせず早速ペアリング設定を始める。
「…じゃあ、私はもう行きますね」
芹が背を向けようとすると「ちょっと待ってちょっと!」と社長は声をかけた。
「流石にプレゼントのためだけに呼び出さないよお」
芹は「どうだか」と言う風に肩をすくめる。
「それで、何です?」
「実は今度アモルアのパーティーがあってさ、」
アモルアというと国内最大級のブライダルコンサル会社である。
わが社ではブライダルジュエリーも扱っていることもあり横の繋がりがあった。
「また?」
パーティーなんて疲れるのだから多くても半年に一回とかにして欲しい。
「それがさ、独身集めてくれって言うんだよ。要は会社繋がりの出会いのパーティーってワケ。まあ来る人たちの身元は保証されてるし、興味があるなら芹ちゃんもどうかなーと思って」
芹はチラリと冴島を見てみたが、相変わらず書類整理をしている。
「…遠慮しておきます。疲れるだけだし」
「わかったよ。じゃあうちからの参加社員少ないなぁ、織間君と冴島君だけかあ」
「は!?」
芹は思わずバンッと机を叩く。社長はビクッと飛び上がった。
「え、冴島さん行くんですか?」
「う、うん…。まあ本人興味ないらしいんだけど、流石に織間くん1人だけっていうのも寂しいかなって無理言って…」
「へ、へぇ…」
芹は動揺を隠しきれないまま髪の毛を整える。冴島はというと…芹と目を合わさないようにしている。
「ま、とりあえず私は行きませんから…よろしく」
芹は逃げるように社長室を後にする。
(…ムカつくムカつく…ムカつく)
心の中で悪態をついて、エレベーターの中でダンッと地団駄を踏んだ。
最初のコメントを投稿しよう!