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此処は幻獣が次々と生まれる世界。
しかし、その中でも、たった今、ある意味特殊な幻獣が生まれようとしていた――
其処は幾千年と年月を重ね、巨大な古樹を中心に生い茂った、深い深い森の中。
その森の主ともいえる古樹は、いつしか意志を持つ存在へと変化していた。
古樹は願う。
自らのように意志を持ち、此処から大きく動けぬ我が身に変わり、広いこの世界へ飛び立てるモノ――我が子達が欲しい、と。
力ある深山の主が願ったことで、古樹の実には力が宿った。
そして、その願いに引き寄せられたのか、偶然世界の幻獣発生と重なり合い、稀なる精霊寄りで植物の性質を持つ幻獣が新しく誕生することになる。
けれども、ある意味特殊なその成り立ちから、古樹の実――種子は特異な性質を持つこととなった。
古樹は力あれど、植物。
その実に含まれる種子は多く、完成形も分からず、ただただ願った我が子――種子達は著しく多様性に富むことになる。
つまり、1つとして同じモノはない、世にも珍しい幻獣の種子達となってしまったのだ。
母なる古樹は多様性に富んだ我が子達に戸惑いつつも、喜んだ。
そして、心をこめて、その旅立ちを祝う。
風よ吹け。
我が子達をどうか遠くへ運んでおくれ――
その願いは、すぐに叶えられた。
強い西風が種子達を空へとさらう。
一斉に懸命に綿毛を広げ大空に舞う、幻獣の種子達。
遠くへ、遠くへ行くんだ。
いつか、母さまのような大樹になって、そして――
母の願いと希望を胸に、強い風に運ばれ、幻獣の種子達はあっという間に見えなくなった。
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